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絶版希少図録本 香合 草人木書苑 茶道美術 形物香合相撲番付表
監修 千宗室 裏千家 家元 顧問 千宗左 表千家 家元 千宗守 武者小路千家 家元 藪内紹智 藪内流 家元 小堀宗慶 遠州茶道 宗家 遠州流 山田宗偏 宗偏流 家元 淡交社 1982年 初版 金箔押し布張り上製本 作品写真図版フルカラー 解説写真図版モノクロ 30.5x21.6x2.5cm 215ページ
※絶版
日本の茶道六大流派の各家元・宗家が監修した、 国宝・重要文化財、名物はじめ、茶道美術の正真正銘・本物中・最高峰の 茶道具ばかりを集めたフルカラー写真図録本全集「草人木書苑」のうちの一冊。
本書は 香合。形物香合番付・ルビ・解説あり。 写真図版は実物大に近いカラー写真で、実際にそれぞれの道具を手にとって拝見するような感覚で楽しめる上、 箱書きなど付属物、伝来、寸法、古文書などの所載、道具の見どころや由緒など詳細に解説したもの。 参考文献、古文書釈文、解説、系譜なども収載。 巻末には、江戸時代・安政ニ年の形物香合相撲番付表も掲載。 内容充実の、茶道・骨董品・茶道具・日本美術・東洋美術など愛好家必携、大変貴重な資料本です。

【刊行のことば 千宗室】全集全体の序文 日本の茶道は、その成立の初期から今日まで、綜合的な文化体系として、日本人の生活文化の基調としての役目をはたしつづけている。 日本人固有の審美的な美意識から、茶室・茶庭といった建築空間の構成、各種道具の生活工芸としての造型、点前作法に見る坐作進退の姿勢、懐石を中心とした飲食の意匠性まで、日本人の生活基盤のなかに、ふかく根ざして、伝統的なくらしとなって生きているのである。 ところで、この茶道の真髄を把握するためには、どうしても通らなければならない関門のあることを忘れてはならない。それは、茶道を構成する道具に対する知識と鑑賞眼の琢磨である。実は、茶道の極意は、この第一の関門を初歩としながらも、これを究極とするとも言われるものである。
 目利ニテ茶湯モ上手、数奇ノ師匠ヲシテ世ヲ渡ル(茶湯者卜云、一物モ不持、胸ノ覚悟一、作分一、手柄一、此三箇条ノ調タルヲ侘数奇卜云々 唐物所持、目利モ茶湯モ上手、此三箇モ調ヒ、一道二志深キハ名人卜云也
と『山上宗二記』にあるように、茶道具の鑑賞が、古来、如何に重視されていたかがわかる。だから、今日の茶道を、文化遺産として考えるとき、精神文化さえもが、道具を中心とした造型遺産に内包されると考えてもよいのである。 このたび『茶道美術全集』の刊行を企図した。それは、茶道の造型遺産をとおして、茶道の美の真実を体系化することにある。 幸いにして、多くの読者諸賢とともに、美の宝庫の中に遊ぶよろこびをわかちあい、明日への茶道人の歩みの資たらしめんとねがうのである。
【香合原色図版目次より】 交趾 大亀 交趾 台牛 千家名物 交趾 花喰鳥 交趾 黄鹿 交趾 分銅亀 交趾 狸 交趾 菊蟹 交趾 小判蟹 交趾 笠牛(黄色) 交趾 大獅子 交趾 金花鳥 交趾 柘榴 交趾 黄鴨 交趾 桜鯉 染付 辻堂 染付 呱々鳥 染付 荘子 染付 張甲牛 染付 水牛 染付 銀杏 染付 拍子木 呉須 赤絵四方入角 呉須 赤玉 呉須 台牛 名物 呉須 松皮菱 呉須 菊蟹 呉須 木瓜 呉須 銀杏 呉須 周茂叔 呉須 有馬筆 青磁 桔梗 青磁 袋鼠 青磁 トキヤロ 青磁 桃 大 青磁 桃 小 和蘭 白雁 宋胡録 九角 中興名物 宋胡録 柿 祥瑞 横瓜 祥瑞 蜜柑九枚葉 (在銘) 祥瑞 立瓜 祥瑞 鳥差瓢箪 鳥刺瓢箪 祥瑞 瑠璃雀 黄瀬戸 宝珠 黄瀬戸 根太 志野 一文字 万年青 志野 茄子 志野 辻堂 織部 筋兜 織部 串団子 仁清 色絵鶏 仁清 玄猪包 仁清 色絵鶴 仁清 色絵結文 乾山 鑓梅 長次郎 黒楽 菊桐文 名物 光悦 兎 唐物 青貝一文字 唐物 青貝布袋 唐物 青貝蘆葉達磨 千家名物 存星 松虫 紅花緑葉 林和靖彫 上代蒔絵 鶴文螺鈿入長角 上代蒔絵 飛鶴文螺鈿入長角 鎌倉時代蒔絵 蓬莱山 鎌倉時代蒔絵 秋草文 鎌倉時代蒔絵 萩文 鎌倉時代蒔絵 物かは 碁盤蒔絵 大名物 八幡名物 鎌倉彫 潯陽江 鎌倉彫 義経 鎌倉彫 雲松文 唐津 紅葉形 木米 開扇梅絵 木彫 鴛鴦 覚々斎好み 大樋 亀の洲 仙叟好み 橙宗且好み 名取川 直斎好み 溢梅蒔絵 利休好み 総説 小田栄作 形物香合のいろいろ 図版解説 小田栄作・小田栄一 形物香合番付
【茶道具としての香合 より一部紹介】 茶道具のなかで、香合のしめる位置はなかなか重要であるが、その点を理解するためには、茶道が、その成立の根底に、仏教的な世界観をもっているということに対する理解が必要である。 平安から鎌倉へ、室町から東山を経て織豊期までの茶の系譜をたどるとき。モこに登場する茶の先駆者は、すべて仏者であった。栄西は禅僧であったし、珠光も紹鴎も、仏教的世界を茶の理想にえがいた人物であった。茶道の大成者である利休にあっては、「ニ十年飽参之徒」でもあった。だから、茶を飲むという行為は、ただそれだけではなくて、もっと高い次元につらなることを意図していたのである。『南方録』の「覚書」にしるされている茶の理想は、「仏祖ノ道」に通ずべきもの、「三界ノ火宅ヲ出ズベキ」ものと、はっきりと規定していることによってもわかるように、即物的な意味での茶は、ここではきびしくいましめられているのである。だから茶室も「露地草庵」として仏の道に通ずべき修行の道場であり、他の世俗的な世界と区別されている。 『南方録』の「覚書」のはじめには、次のようにしるされてある。 覚書 宗易ある時、集雲庵にて茶湯物語ありしに、茶湯は台子を根本とすることなれども、心の至る所は、草の小座敷にしくことなしと常々の給ふハ、しか様の子細か候と中、宗易の云、小座敷の茶の湯(中略)中国で製作させて輸入するまでになる。 小堀遠州は、切り形を作って、中国の景徳鎮をはじめとして、呉須にまで注文を出した。そのうち藍絵染付は二十種ほどにおよび、磁器は涼味を感ずるからとて風炉用の平一文字形香合をも好み焼かせて舶載し、形物香合の番付面を賑々しく飾っている。また京都においては、交趾香合の流行に便乗して、模造品をたくみにすることを評判とした陶工さえもが出現するようになるのである。名物蔵帳にみえる香合 一般論はこの程度にとどめ、名物蔵帳に見える香合の実際をここに再録してみよう。これらを見てわかることであるが、香合は、蒔絵だけではない。陶磁器の香合もあれば、木地の香合もあって、きわめて多彩である。 蔵帳というのは、各大名が所蔵する各種道具を記録したものである。ふるくは『君台観左右帳記』や『御飾書』などがあげられ、さらにおびただしい数にのぼるが、そのうちおもなものをあげると、 『松屋名物記』 『玩貨名物記』 『柳営御物集』 『三冊名物記』 『中興名物記』 (後略)
 【香合の種類と時代 より一部紹介】 以上のべてきたところを要約すると、次のとおりになる。 すなわち、香合を大別すると、取扱い方も唐物香合と和物香合の二つに分けられ、素材別にみると、漆器と陶磁器と金工その他となる。 時代的にみると、香合に対する茶の立場からの関心のたかまりが基準となるから、中国においては、宋・元・明かそのはじめであり、朝鮮や南方諸地域がこれにつづく。日本の場合は、桃山期、利休による茶道の大成が、これらの製作を刺激し、漆工のみならず、国焼による香合の製作意欲をあふることとなり、また、ふるく平安の昔にまで遡って蒔絵漆器などを採用することとなる。これは、江戸時代初期にいたって、茶人たちが古代美術の蒔絵器物中で格好の小箱があることを知って、それを大いに歓迎して香合中に重くとり入れたからであり、「千家名物」中にも記載が見られるようになる。 なお香合の各項について筒単な解説を試みると、次のとおりとなる。 堆朱 中国の宋時代になってさかんとなった漆工芸技法の一つであって、朱漆を厚く何回も塗りかさねて、その漆に模様を彫り出したもので、漆の種類、黒・紅・黄漆によって、それぞれ、淮黒・淮紅・淮黄といわれる。また紅花緑葉といって色とりどりの漆を施したものもある。 青貝 中国の宋・元・明時代に発達したいわゆる螺鈿と同じものである。青光りのする只を薄く細く切って美しい紋様を黒地(稀には朱地)の漆面に砥ぎ出した器で、一文字と称する丸形の小品が多く香合として用いられ、稀には異なった種々の形のものもある。中国特有の漆工芸品で、名物には布袋文様が幾つかある。 存星 中国元・明時代の独特の美術工芸品で、存星とは作者の名であると言い伝え、彩りの美しい色漆で文様を描き、絵の輪郭を線彫して沈金(彫り沈めた線に金彩したもの)を施した精巧なもので、東山時代から鑑賞されており。稀少で珍賞される。 青磁 中国唐宋時代から近代まで最も発達した世界的美術磁器で、わが国にも平安時代から輸入鑑賞されているが、宋窯と称せられる青磁香合の牡丹唐草紋、桃形の二種が現存し、形物香合番付上位に、桃(明)が記載されている。 染付 おおむね中国景徳鎮の製品で、茶道炉用香合最初の将来品で、形物香合一覧(番付)の最上位に記載されているその七個も、ほとんどが明時代の既製品で、茶人が見立てた応用の香合であり、かつ同二段目以下はおよそわが国からの注文品と伝えられている。 呉須 中国南方の地広東付近、石媽・潮州の焼き物であろうと伝えられる藍染付の磁器を呉須と称え、これに赤・青釉の彩色を加えたものを呉須赤絵と通称している。わが国に舶来した諸器は夥しい数で、その陶風が雅味を持つところから茶人が愛用し、注文して焼成させたものも少なくない。香合も明・清時代にわたって遠州その他の好みの形で焼かせたものがある。(後略)
【香合の番付 より一部紹介】 さきにあげた蔵帳関係の抄録によってもわかるように、大名たちの収集茶器のなかで、香合は相当に高い比重をしめていた。これは、一般の茶人たちの香合への関心度が高いことをも物語ると考えてよく、相撲の番付に似せて、形物香合の番付までが生れるようになる。 この「形物香合相撲」番付というのは、安政二年(一八五五)に、江戸・名古屋・京都・大坂・金沢の茶道具屋と、当時の茶道具の権威ある目利きによって作られた名物香合の格付であって、形物香合相撲番付という。(ニー五頁、参考付録参照) ここにとりあげられている香合は、交趾・染付を筆頭として、青磁・祥瑞・呉須・宋胡録・紅毛などであって、これらの香合を、前ページにあげた表にあてはめてみると興味ふかい。なにがゆえにこうしたランキングがなされたか、当時の茶人の感覚をうかがうのに非常に参考になる。 この番付を見るうえで注意すべき点を、まずあげてみよう。 一、格をきそうものは、すべてひろい意味での唐物であること。 二、行司に官休庵直斎好みの名取川埋木蒔絵、藤村庸軒の好んだ回也、標有梅の三つの香合が登場、 これはいずれも木地塗物と瓢であること。 三、頭取には、黄瀬戸・伊賀・志野・織部・仁清・乾山といった国焼が七点えらばれていること。 四、世話人には。存星・青貝・堆朱・ハシカ彫・堆黒・鎌倉彫・キンマといった漆工の香合やら、そ の他国焼も唐物も朝鮮も好物までも一括してほうり込んでいるということ。 五、差添に南蛮や寧波(染付)の名が見えること。などである。形物というのは、一つの型で造られたものの意であるが、その番付のなかに、それ以外のものまで、香合として珍重されているのは、その素材の如何をとわず、すべてを網羅していることである。 そのおのおのにつしては、本書の図版に代表的なものを選んで掲載したので、その茶道具としての美術的価値につしては、各論の図版解説に詳細をのべることとする。 ともかくこの形物香合の番付というのは、現代の美的な感覚から言えば多少のくいちがいはあるが、香合を語る場合、一つの標準となっているものである。 ここで、番付の図表だけでは読みにくいものも多いので、以下、すべてにルビをつけて記載することとする。
交趾香合 大亀、台牛、桃、花喰鳥、鹿、菊蟹、分銅亀、中亀、狸、小判蟹、笠牛、大鴨、大獅子・・・(後略)
【図版解説 より一部紹介】 交趾 大亀 付属物 内箱 桐白木 中箱 書付 万仭和尚筆 伝来 生嶋家-藤田家 寸法 (掲載あり、ここでは略) 香合の王座といえば、数奇者ならばだれでも「交趾の大亀」と答えるであろう。そもそも茶道で焼物香合の必要が生じた当初には、まず中国から青磁や染付のものを求めたが、それにもまして交趾と称して渡来した三彩釉の小盒は、茶人のことに歓迎するところであった。個々の形状がほとんど吉祥を表する生物の形を意匠とし、しかも香合に最適のものであったからである。なかにもこの大亀こそ第一番の妙品であるというので、香合番付をつくったときには東の横綱として最高峰に据えられた。 古くから大阪の某豪商の家に伝来していたが、明治初めの変動期に同じ大阪の素封家生島氏の所持となり、四十五年同家の名器売立会に出品された。 ところが、かねてからこの香合の話を聞いて、いつかはわが物にせんと機会を待っていたのが、ほかならぬ大好事家の藤田伝三郎翁である。当時、翁は晩年で病重く就床の人であったが、大亀の入札会と聞くや、最高予想の注文を発し、生死の境に在るのも忘れて落札を期した。その結果、九万円で落札を得たとき、莞爾としてうなずいて冥界の人となったという。 この香合は、総黄釉、甲文三彩の最高色彩で、同種「金森」「松平」の二点は、いずれも、総青釉。甲文二彩である。 なお、各ページに掲載した下図のカットは、すべて、同種の参考品である。
交趾 台牛 千家名物 付属物 内箱 桐白木 書付閑町庵宗信筆 外箱 黒塗 金粉文字書付 伝来 京都六角三井家 寸法 略 この香合は、形物香合の東の関脇に位している。数の少ないうちにも、もっとも逸品として定評のあるもので、形は端然として釉色ことに美しく、交趾香合の特色とする黄釉をもって、牛の姿がよく浮き出し文様になっている。周囲の紫釉と全体の青釉の調和がみごとである。 底の盆付に「天」の字を見るのはまれで、とくに推賞されている。 ふるく『中興名品録』(注、千家名物)にも記載され、京都六角の三井家に伝来した。箱書付がまた、坂本周斎(閑事庵宗信)である。 近世、同族の三井泰山がこれを愛蔵した。筆者も親しくこの香合を実見する機会を得て、嘆賞したものであった。 昔からこれを、交趾香合のなかで、古渡り物の筆頭として、茶人がもてはやしている。同種のものは数個しかなく、好事家に秘蔵されている。台牛とよむ。
染付 辻堂 寸法 略 染付辻堂香合は、香合番付西の筆頭大関にかかげられ、染付のうち、もっとも時代がふるいといい伝えられる。数も少なく、筆者の知るところでは五点だけである。 なかでもこの香合は、出来上がりがもっとも優秀で、きずも見えず、形物香合中でも抜群の賞賛を博している。 色合いはきわめて鮮やかで、文様は松葉と落葉を藍色に染め出し、形は端然としている。 とくに蓋が身にかかるところ、すなわち、「器掛り」に「火土」が赤み色よく出て、これを茶人がこよなく愛したのである。 番付には「辻堂」としるされたが、ふるくは「くず家」とも書かれているのがある。 辻堂とは、田舎道の辻に立つ小祠とながめたものである。 他の同種のものは、いずれも茶人の宝庫に大切に愛蔵されている。
青磁 桔梗 伝来 赤星家-益田鈍翁 寸法 略 この香合は、桔梗とはいうが、はたしてなんの花をかたどったものかは判然としない。五弁の花片が形正しく蓋の輪郭をなし、身は正五角形で、高台がついている。 茶人は、この形を桔梗とめでて賞玩したものであろう。 青色の青磁釉の裾に、少しばかり土を見せて、青磁の青と調和している。 番付面では小結に位しており、現存するものは数少なく、筆者は同種のものは三個より見ていない。 これは、赤星家の伝来で、同家の売立てに際して、益田鈍翁がこれを手にすることを逸して執心やみがたく、ふたたび市場に出だのを好機にただちに手に入れ、快心の笑みをもらした逸品と伝えている。 昔は、この種の香合は茶人がもっとも好んだものであって、貴重視され、木米もまたこれを模作しようとして苦心した、という話が伝わっている。
祥瑞 横瓜 伝来 横江家 寸法 略 祥瑞香合は、はじめ遠州の好みによって、まず中国に注文して景徳鎮で造られたものである。鳥差瓢箪を筆頭に、横瓜・立瓜・枕・豆男・豆獅子・瑠璃雀・筋兜が知られている。 これらは、すべて『遠州蔵帳』には染付とのみ記帳されている。ところが、これらも祥瑞と称するようになったのは、この注文の使者五郎大夫が中国にとどまって祥瑞と号し、多数の陶器を製作して高名になったからである。 この横瓜をはじめ、さきにあげた香合は、いずれも藍色、白生地まことに見事にでき上がり、当時の茶人の眼を驚かす珍器となってもてはやされた。 瓜を横においた形で、山水図と丸文とをつないでいておもしろく、色目もまたよい。 この種のものは。立瓜をはじめ数品、いずれも数奇者に鑑賞されているのであるが、遠州好みであることが一向に知られていないのは、前記のごとく、遠州家では祥瑞の名を採用していなかったからであろう。
唐物 青貝布袋 付属物 箱 桐白木書付 同蓋裏 書付 片桐貞芳筆 挽家 黒塗 寸法 略 青貝名物香合として、もっとも著名な、数個伝来のうちの一つで、茶道の創成期によく会記中に特記されているものである。 すおり布袋に、宝づくしをちらした図柄が約束で、古渡りと袮されているのは、中国元時代あたりの作品でもあろうか。 周囲の文様は他に幾種類かあるが、やはり室町時代に、何個か舶載されたのであろう。 いずれもこれらは、名物帳に記載されている。 この香合は、片桐石見守(石州)所持と箱にしたため伝えている。また、後裔にあたる片桐貞芳は、箱書に次のようにしるしている。京都 松剛家より先祖に伝来の由緒書、ならびに太閤時代茶人針屋宗春自筆書判の添書一通之有り、この度これを記すものなり、安永八年 署名 云々
上代蒔絵 鶴文螺鈿入長角 伝来 益田鈍翁 寸法 略 この香合は、鶴丸螺鈿、総雷文蒔絵、長角錫縁で、蓋裏と身のうち。盆付とも菊花の蒔絵が施してあり。まことに精巧なものである。 時代もふるく、昔の名称でいうと、蒔絵の最高とされた「保元時代」といわれるものであろうか。これに類する時代品はまことに少ない。 茶道の初期では、中国の漆器香合ばかりを賞玩していたが、徳川の初期頃となって、このような名品があることを知った茶人は、積極的に茶の香合として採用したのであった。 この香合は、昔は、貴人の化粧道具の一つであり、わが国の美術の特徴としても珍重すべきものである。 かくのごとく年代の古いもので、大きなきずもなく、よく保存されているものははなはだ少ない。 益田鈍翁が久しくこれを愛用して、蒔絵香合中の逸品と称し、手中の玉としていたことは有名である。
ほか
★状態★ 昭和58年のとても古い本です。 金箔押し布張り上製本の外観は通常保管によるスレ程度、天小口本文に経年並ヤケ・しみなどありますが、 カラー写真図版良好、目立った書込み・線引無し、 問題なくお読みいただけると思います。(見落としはご容赦ください)

<絶版・入手困難本>オークションにも滅多に出ない、貴重な一冊です。 古本・品にご理解のある方、この機会にぜひ宜しくお願いいたします。

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